2022-12-28 問ふ者との遭遇
問ふ者を想像した。
問ふ者の象徵として、小學生の時の私が恐怖してゐた、カーテンの隙閒から覗く宇宙人の像があった。
其れは、夜の闇の中から、私をじっと見てゐた。
私は其處で蒲團から出て來て床にへたり込み問うた。
「何が目的ですか。」
相手は、一瞬で私をバラバラにする力を有してゐたが、さうはしなかった。
しかし、猶ほ、私をじっと見てゐた。
私は居住まひを正した。
背筋を伸ばして、窗の外を見詰め返した。
相手は、未だ、自分を見詰め續けてゐた。
どうも、其の見る事自體によって、私が「其の樣でない」私に變化する事を期待してゐる樣子であった。
私が蒲團の中に包まった儘でゐるとしたら、其れは彼が一番望んでゐない狀態であった。
部屋の明かりを明るくした。
多分、90度首を傾げて片眼で此方を見てゐる樣子であった。
カーテンを開けて見た。
窗の下から上まであるくらゐの體長であって、白くのっぺりとした存在であって、90度首を傾げて眞っ黑い片眼で此方を見てゐる樣子であった。
そして其の「見」自體が、謂はば問ひであった。
私に問ひ掛けてゐた。
言語として表現するならば、「あなたは……?」とでも表現しうる樣な、全存在を問はれてゐる樣な問ひであった。
其處に對して、見詰め返しながら「私は……!」と返答した。
私の全存在で以て返答する樣に返答した。
すると、視覺的には顏が存在しないにも關はらず、彼は「ニコッ」とした樣であった。滿足げである樣に感ぜられた。
私は、手を合はせ、祈る樣に頭を垂れ「有り難う御座いました」と念じた。
すると「復た來る」と云ふ意圖其の物が意圖其の物として感ぜられた。
そして、白いのっぺりとした存在が、音も無く上方に移動して行って、視野から消えた。